Misc.>> 住宅用火災警報器が全ての住宅に義務化

住宅用火災警報器が全ての住宅に義務化

住宅用火災警報器を理解する5つのポイント

  1. 全ての一般家庭に取り付けなければなりません。
  2. 取り付けに特別な資格や技能は不要です。(電池式の煙感知器なので配線工事は不要)
  3. 取り付ける場所は寝室と階段と台所です。(一家に一台ではありません)
  4. 火災を未然に防ぐためではなく、逃げ遅れて死亡しないための警報器です。
  5. 家電量販店やホームセンターでの実勢価格は@6,500円くらいです。(平成18年12月現在)

2006年6月1日に改正消防法が施行されました

 全ての住宅(一般家庭)に住宅用火災警報器の設置が義務付けられました。新築住宅は2006年(平成18年)6月1日から、既存住宅は市町村条例により定められた日から必ず住宅用火災警報器を取り付けなければなりません。

 従って、既存住宅に設置を義務化する日は地域によって違いますが、その期日は平成20年6月1日から遅くとも平成23年6月1日までと法令で定められています。例えば、名古屋市であれば平成20年6月1日から既存住宅への設置が義務付けられます。愛知県および三重県内の市町村は、ほとんど名古屋市と同様に平成20年6月1日からの義務化です。(岐阜県は平成23年、静岡県および長野県は平成21年が多いようです)

 既存住宅への条例適用日や設置基準等については、社団法人日本火災報知機工業会の「市町村条例別の設置場所一覧」がよくまとまっています。ただし、実際に設置する際はお住まいの市町村の消防本部やホームページ等で確認して下さい。名古屋市であれば、市のホームページの「暮らしの情報>消防と防災>消防>火災に対する日頃の備え>すべての住宅に住宅用火災警報器の設置が必要となります。」をご覧下さい。

住宅用火災警報器を取り付けるには資格不要

 住宅用火災警報器の取り付けは特別な資格や技能を必要としません。電源がAC100V直結式(コンセント式ではない)警報器については電気工事士の資格が必要になりますが、今後AC100V直結式の住宅用火災警報器は少なくなると思われます。(警報器本体と同等の約10年間の寿命をもつリチウム電池を採用する機種が増えた)

 これまで火災報知機(自動火災報知設備)はある程度の規模以上の建物に設置が義務付けられてきました。そして、その取り付けは国家資格者である消防設備士の独占業務とされてきました。これは医師や弁護士と同様に高度な専門知識・技能が必要とされるからです。

 しかし、住宅用火災警報器は誰にでも取り付けられるように法令や規格が整備されました。これは何よりもまず住宅用火災警報器を広く普及することが急務だからです。速く普及すれば、それだけ住宅火災による死者を減らすことができるのです。弊社のような専門業者に取り付けを依頼すると割高になり、速く広く普及するという本来の目的が失われることになりかねません。

 以上のように、家庭でお住まいになる方自身が取り付けるべき住宅用火災警報器ですが、お年寄りや体の不自由な方だけの家庭では自身で取り付けることが大変困難です。最近はこういった方を防災弱者と呼びますが、その対応については地域コミュニティの助け合いに大きな期待が寄せられています。

 例えば、町内会で住宅用火災警報器を安く一括購入して、防災弱者家庭へは有志によるボランティアで取り付けを行うといった方法で成功している地域もあります。

住宅用火災警報器を取り付ける場所

 住宅用火災警報器を取り付ける場所は寝室と階段と台所です。台所(厨房)については、必ず取り付けなければならない(義務)とする市町村と、なるべく取り付けた方がよい(推奨)とする市町村があります。名古屋市は台所への設置は義務です。

住宅用火災警報器を取り付ける場所

 台所に取り付ける場合は、住宅用火災警報器に湯気(水蒸気)が直接あたる場所(ガスコンロの直近等)は避けてください。煙感知器は空気中の微細な粒子を検出する方式のため、湯気と煙の区別がつきません。どうしても台所が狭くて湯気が常時滞留する場合は、熱感知式の住宅用火災警報器を使用する方法もあります。熱感知式を設置しようとする場合は市町村条例をよく確認してください。(名古屋市は煙感知式しか認めていません)

 いずれにしてもワンルーム以外のお住まいでは「一家に一台」では足りません。寝室の数+α必要です。子供部屋のように勉強部屋兼寝室にも必要です。客間のように来客時のみ就寝する部屋には不要です。

 それ以外にも設置場所や機種に関する細かな条例がありますので、実際に設置する際はお住まいの市町村のホームページ等で確認して下さい。名古屋市であれば、市のホームページの「暮らしの情報>消防と防災>消防>火災に対する日頃の備え>すべての住宅に住宅用火災警報器の設置が必要となります。」をご覧下さい。

住宅用火災警報器と天井・壁からの離隔距離

 前項で住宅用火災警報器は誰にでも取り付けられるように法令や規格が整備されたと書きましたが、実際に取り付ける上で非常に簡単になったのは、天井だけではなく壁にも取り付けられるようになったことです。

 火災報知機(自動火災報知設備)の規準では感知器は通常天井面にしか取り付けられませんが、住宅用火災警報器は壁面に取り付けてもよいことになったのです。

 とはいえ煙や熱は高いところへ昇っていきますから、なるべくなら従来通り天井面に設置することが望ましいのですが、もし壁面に取り付ける場合はできるだけ天井に近い(高い)ところに設置するべきです。

 ただ、天井と壁が接する隅の部分は対流の性質上感知しにくくなるので、天井面から15cm以上離して取り付ける必要があります。法令で定められた設置基準は以下の通りです。

    1. 壁面に取り付ける場合は天井から15cm以上50cm以内に取り付ける。
    2. 天井面に取り付ける場合は壁から60cm以上離して取り付ける。

 また、エアコンの吹き出し口付近は気流の流れが大きいため感知しにくく、さらに煙感知器の内部に埃などが吹き込まれて故障や誤作動の原因になります。エアコンの吹き出し口からは1.5m以上離して取り付けなければなりません。

※ホームスプリンクラー等上位の消防用設備が設置されている部屋には住宅用火災警報器は不要です。

建物火災の死亡原因の5割以上が「逃げ遅れ」

 火災は人命や財産を一瞬にして奪います。これまで我が国の消防法では大規模な建物(デパートやホテル等々)に自動火災報知設備を始めとする消防用設備の設置を義務付けて対応してきました。

 しかし、実は建物火災による死者数の9割は、そういった消防用設備が義務づけされていない一般住宅の火災によるものなのです。しかも死者全体の6割は「逃げ遅れ」によるもので、住宅火災による死者の6割が65歳以上の高齢者です。

 この事実から「早く火災に気づき避難できるようにすること」が火災による死者数を減らす有効な手だてであると分かります。欧米ではいち早く住宅用火災警報器の義務化を進め、アメリカでは義務化以来21年間で死者数が5割減、イギリスでは13年間で4割減という実績があります。こうしてみると我が国の義務化は遅すぎたともいえるでしょう。

 よくあるご質問に「住宅用火災警報器を取り付ければ火事を防げるのか?」というものがありますが、答えは「火事は防げません」です。

 勿論、早期消火に成功して大火事を防ぐこともあるでしょうが、住宅用火災警報器の役割は前述したように「逃げ遅れ」をなくすことです。特に就寝中は異変に気づくのが遅く、気づいたときには煙を吸い込んでいて身体が動かず、そのまま亡くなるという事態が起こりやすいのです。そのために今回の法改正は寝室を重点的に警戒するものになったのです。

 住宅用火災警報器が警報を発したら、何よりもまず避難して下さい。

住宅用火災警報器を購入する際の注意点

 住宅用火災警報器は自身の命を預ける機器です。従って信頼性の高い製品を選ぶべきです。その目安になるのは「NSマーク」です。これは第三者機関である日本消防検定協会が鑑定した製品だけに付けられます。

 社団法人日本火災報知機工業会のWebサイトには「海外の製品は自国の基準に基づいて作られており、日本の気候や風土が考慮されて居らずひんぱんに誤警報を出す住宅用火災警報器や肝心の火災で働かない心配が有るものが見受けられます。住宅用火災警報器は、日本消防検定協会の検査合格品NSマークの付いたものが安心です。」と書かれています。

NSマーク こういった海外製品は格安で販売されていることもありますが、我が国内で使用する際に信頼できるのかどうか判断する方法がありません。一方、NSマークの付いた製品の実勢価格は6,500円くらい(平成18年12月現在)と比較的高価ですが、製品本体も電池も約10年間の寿命を持つものが多く、気候風土に合わせた感知方式のみならず信頼性の高い製品です。

 弊社では能美防災株式会社製をお勧めしています。リチウム電池式で寿命10年の高性能機種です。自動自己診断機能が搭載されていて、使用環境によっては10年以内に電池交換警報や感度劣化警報が出る場合があります。その場合は本体ごと交換して下さい。(警報が出たときが機器の交換期限です)

関連リンク